山里 奈津実 個展
YAMASATO NAtsumi solo exhibition

false pregnancy

2018年10月16日(火)から21日(日) 
12:00から18:00


KUNST ARZT では、山里奈津実の初個展を開催します。
山里奈津実は、金表現効果の研究と実践をベースに
「世界に対する好奇心」を探究するアーティストです。
特筆すべきは、盲目的に金を用いるのではなく、
その使用、不使用も重要なコンセプトであり、
また金を「色」としてではなく、「光」そのものとしてとらえ、
命の根源としての意味を込めています。
「風俗画」であるという作品は、
大胆な性的描写を取り入れる射程を有し、
ユーモラスな感性がにじみ出ており、
シンプルに絵画としての魅力を内包しています。
ご注目ください。
(KUNST ARZT 岡本光博)




Fe2O3

2016
シナ合板、うさぎ膠、麻、ソチーレ石膏、アシェット

画面中央の赤い地は、酸化鉄である。
作品題としたFe2O3は、酸化鉄(V)の化学式である。
「Fe2O3」に見られる石膏の白い地とアシェットの赤い地は、
黄金背景テンペラ画技法の金箔を貼る前段階であり、
本来であれば、金箔の後ろに隠れて
私たちが見ることのない層である。
普段は隠れて見えない層を表出させる、
という工程に「大切なことは目に見えない。
本当の意味を理解するための余白のような時間こそ
豊かな芸術体験である」という私の信念を比喩的に託している。
「Fe2O3」に金は用いていない。
しかし、金箔を貼るための基底材であるため
この作品の先に、金は確かに存在している。




false pregnancy

2017
シナ合板、うさぎ膠、麻、ソチーレ石膏、
アシェット、雲母、方解末、金箔

「false pregnancy」は、黄金背景テンペラ画の
技法を用いた屏風、それに相対する額縁との
一双形式の作品である。
和紙の基底材では成し得なかった、金の輝きを表現する。

博士課程学位申請作品展 (2015年)展示風景より



アーティスト・ステートメント
/展覧会コンセプト

私は、「自分が今住む世界に対する好奇心」を
金という素材を介して表現している。
2016年、卵子は受精の瞬間にたった一度だけ光る
(亜鉛のスパーク)と科学誌にて発表された。
人間は、科学が発達するもっと前から、
生命誕生の瞬間には光が常に存在していたと
無意識に気付いていて、輝く素材である金が
絵画に長く用いられてきたことと、
どこかでつながっているのではないだろうか、
と根拠のないことを考えている。




経歴

1990年茨城県生まれ
2018年 京都造形芸術大学大学院修了 博士(芸術)
2017年 公益財団法人佐藤国際文化育英財団 第27期奨学生
2015年 日本文化藝術財団 第20回奨学生
2014年 京都新聞 掲載
(10月5日 「社殿絵図、京都造形芸大院生「緊張」の模写 離宮八幡宮」)
2013年 「離宮八幡宮絵図」現状模写 奉納 (離宮八幡宮/京都)

展示歴
2018年 博士課程学位申請作品展(Galerie Aube/京都)
2016年  「302」 (Art space-MEISE/京都)
2015年 京都造形芸術大学大学院修士修了展 (京都)




祈りの証明

2015
1455×1120mm
黄金背景テンペラ画 麻、石膏、アシェット、
金箔、緑土、鉛白、クレー、黄土、弁柄

「 祈りの証明 」に描かれているのは私の祖父の兄が
戦争へ行く前に写真館で撮った家族全員の姿である。
そこには、私の祖父を中心とすると、
祖母、両親そして兄弟がいる。
孫が、息子が、兄が、無事に帰ってくることを家族は
強く祈ったはずである。脈々と、ここに描
かれた彼らの血液は、私の母へ、そして私へと
流れていて、私の血液や遺伝子のなかに彼らの強い祈りが
流れているのではないかと考え、これを私の祈りの証明とする。
 金を絵画表現に用いることを、誰に咎められたわけでもない。
しかし、祈りを証明したことにより、
私は金を絵画表現に用いることができる。
 「 祈りの証明 」は、黄金背景テンペラ画技法を用いて
制作した初作品である。描かれた九人の家族のなかで、
現在存命であるのは女性一人である。
よって彼女の皮膚には鉛白を用いた
。鉛白は、有毒であるが美しく発色する。
他八名は白土や黄土を用いた。この皮膚の
違いを蛍光灯の下で感じることはあまりない。
暗闇のなかで下から灯りを照らすと、
他八名の皮膚は暗闇に沈み、対して彼女の皮膚は
鉛白の底光りするような発色が、まるで幼い彼女の薄い皮膚が
血液を透かせたような青白さとなり、そしてその瞬間に
背景の磨いた金箔は色ではなく光となる。